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講演「理系の仕事って?

HITリケジョLABO会長の鮎川恵理准教授が、八戸工業大学第二高等学校附属中学校で出張講義を行いました。(2021/11/10) 

昼までは明るかった空が急にかきくもり、大粒の雨が降りだした午後。「サイエンス特別講座」の講師として招かれた鮎川恵理准教授が中学校を訪れました。中学一年生から三年生までの40人ほどが教室に集まっています。

 

鮎川先生は植物の研究者で、南極観測隊に参加してコケの調査を行ったこともあるというユニークな経歴の持ち主です。この日は南極調査と地球環境をテーマに講演をしたあと、「理系の進路」について中学生に語りかけました。

 

「最近、八戸工業大学の同僚の先生たちとともにHITリケジョLABOというプロジェクトを立ち上げました。女の子が理系分野に進むことを応援する活動です」

 

しかし、LABOのメンバーは『女の子はみんな、科学者を目指そう!』と言おうとしているわけではありません。鮎川先生は続けます。

 

「世の中には、研究者だけでなく、理系の勉強をしてきた人が活躍できる仕事が山ほどあります。一見、『文系の人の仕事では?』と思うような仕事でも、理系で学んだ人が力を発揮する仕事はたくさんあるのです」

 

鮎川先生は銀行を例に挙げ、文系の経済学部を出た人の就職先だと思いがちだけれども、たとえば複雑なお金の出入りを管理するシステムを動かすには理系の知識や考え方を身につけてきた人が欠かせないことを紹介しました。

 

「でも、いまの世の中にはいろんな思い込みがあります。女子はみんな理系科目が苦手、とか、数学が苦手だと理系には進めない、とか……。

 

実は私は学生のころ、数学が不得意でした。それでも、登山や環境の勉強などの自分の好きなことをひたすら続けているうちに、なんとか植物の研究者になることができ、念願の南極に行くこともできました。だから、理数系で苦手な科目が1つあったからといって、理系の進路をあきらめる必要はないと思います」

「いま、社会も科学もどんどん変わっていきます。大人が生きてきたこれまでの社会と、皆さんがこれから生きる社会は同じではありません。だから、親や先生に進路について『そんなことをやっていても就職の役に立たないよ』とか『女の子はやっぱり文系がいいんじゃない?』というようなことをもし言われても、全部をそのまま信じなくていいんじゃないでしょうか。

 

進路を考えるとき、いまの時点で『理系か文系か』『何学部に行くか』ということばかりにとらわれないで、『女だから、男だから』といった思い込みにとらわれないで、自分の好きなことを見つけて続けてください。もし、その好きなことのなかに理系の何かが含まれていたら、私はとてもうれしいです」


生徒の皆さんはみな、キラキラした瞳でその話を聞いていました。講演が終わると、その場で感想をしたためます。

 

「どんな学科に進んでも、将来、いろいろな仕事に活かせることがわかりました。(中1・女子)

 

「理系に進もうと思っているので、とても参考になりました。数学やほかの教科も苦手と思い込まずに取り組んでみようと思います。自分の将来についても幅を広げて考えたいです」(中3・女子)

 

「必ずしも大学の学部だけで仕事が決まるわけではないということを聞いて、自分を見直すきっかけになりました。今から目標を決めてそこに向かうことも大事ではあるけれど、自分の好きなことを見つめて生きていく道もあるんだというメッセージに勇気づけられました」(中3・男子)

 

生徒の皆さんが感想を書いている教室の外ではちょうど雨が上がり、大きく鮮やかな虹がかかっていました。



理系の学問や進路に関する講演のご要望は以下で受け付けております。女子生徒さん向けに限定した内容も、そうでない内容でも可能です。対象、内容、日程、開催方法など、気軽にご相談ください。

八戸工業大学「HITリケジョLABO」 rikejo@hi-tech.ac.jp 


記事公開日 2021/12/7

取材・構成 江口絵理

デーリー東北(2021年11月17日朝刊)で、鮎川准教授の講演の様子が紹介されました

「デーリー東北新聞社提供(2021年11月17日 朝刊15面)」

この記事はデーリー東北新聞社の許諾を得て転載しています。