HITリケジョLABOメンバー・インタビュー(3

畑中 ひとみ

(八戸工業大学 総務部 主事

中学卒業後に理系の学校である「高等専門学校」に進学し、その後、事務職として地元の八戸工業大学で仕事を始めた畑中ひとみさん。地元での就職を優先しながら、理系の知識や経験を生かせる道に進んだいきさつを語っていただきました

――中学卒業後、どうして高等専門学校(以下「高専」)に進学されたのですか? 


もともと理科が好きで、中学では科学部に入っていたのですが、受験先を考えるときには「高専って何?」というぐらい、よくわかっていませんでした。八戸工業高等専門学校が開催していた中学生向けの科学実験イベントがあって、それに参加したことで「こんな学校があるんだ」と知って、受験してみたんです。 


――高等専門学校は普通高校と何が違うのですか?


普通高校は3年間ですが、高専は5年間の一貫教育で、工学などの技術系の分野を重点的に勉強します。私が八戸高専を受験したときは工学系の学科が4つあり、そのうちの一つを選ぶ形で、私は物質工学科を受けました。当時の私は、物質工学がどんな学問かもよく知らなかったんですが(笑)。


――5年間の課程が終わるとみんな就職するのですか?


就職する人もいますが、大学の試験を受けて編入するという道もあります。また、高専の「専攻科」に進学して、さらに2年間、勉強を続ける選択肢もあります。修了すると、一般の大学卒業と同じ扱いになります。

 

私は専攻科に進みました。高専4年のときに炭素を使った素材を開発する研究室に配属され、その研究が楽しかったので、もっと続けたかったのです。

 

専攻科修了後はその研究室で技術補佐員として雇っていただけて、炭素繊維とプラスチックが混ざった新しい素材「CFRP」の研究を行いつつ、企業に連携を働きかける仕事をしていました。


――どのような連携を提案していたのですか?


研究室の先生はCFRPを炭素繊維とプラスチックに分解する手法を開発し、特許をとっていました。飛行機の機体にCFRPを使うと、従来と同じ強度・安全性を保ちつつはるかに軽量化できるのですが、当時CFRPは非常に高額で、素材が混じっているため端材等の廃棄に困るという課題がありました。そこで、その分解の手法や分解後の炭素繊維を使って研究開発等をしませんか、と企業に働きかけるのです。

 

ただ、3年後には研究室の先生が定年退職されたので、別の就職先を探すことに。地元の八戸で就職したかったので、理系の仕事かどうかにはあまりこだわらずに探しました。

 

産業界と学術研究の橋渡しをする「産学連携」の仕事に携わった経験を活かせるところがいいのではないか、と周りの方に助言を受けて、八戸工業大学の事務職に応募したところ、幸いにも採用されました。配属先は、社会連携学術推進室でした。


――それまでの経験が活かせそうな職場ですね。


実は、仕事を始めてから、自分には特許を始めとする知的財産の知識が全然足りないことを痛感しました。そこで、あらためて勉強して知的財産管理技能士という資格を取ったんです。

――特許を申請するための知識が必要だったということですか? 


いえ、申請手続きには弁理士という専門職の方のお力を借りています。知的財産管理技能士は、企業や研究機関の中で、特許や実用新案や商標といった「知的財産」をどのように管理していくかを考える役割を果たします。

 

たとえば、学内の研究者の方から「この研究成果で特許がとれるだろうか」というご相談をいただいたときに、ほかに同じような特許がないか調査したり、取得した特許をもとにした企業との共同研究や、新たな研究資金の獲得ができないかを検討・提案したり。企業へのライセンス契約に関する実務も仕事のひとつです。

 

――リケジョの活躍の場は、一見、理系ではない職場にもあるんですね。


進路として理系を選ぶと、「将来は何になるの?」と聞かれがちです。私も受験のときに聞かれて困った記憶があります。まだ中学生で、将来のことなんて考えていませんでしたから。

 

でも、理系を選んだ人がみんな、技術者や研究者を目指すとは限りません。文系の人とまったく同じように、多様な就職先がありえます。

 

「リケジョといえば理系の仕事」という一本道ではなく、地元での就職や文系の仕事など、いろんな選択肢があることを、中高生や親御さん、そして学校の先生方に知っていただけたらうれしいです。

畑中ひとみ (Hitomi HATANAKA)

八戸工業大学 総務部 総務・学事チーム 主事

八戸工業高等専門学校専攻科物質工学専攻修了。同校で技術補佐員を務めた後、2015年より八戸工業大学に勤務。社会連携学術推進室で産学連携などを担当し、2016年二級知的財産管理技能士(管理業務)資格を取得。2021年、八戸工業大学教職員特別賞を受賞。


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八戸工業大学「HITリケジョLABO」

rikejo@hi-tech.ac.jp 


記事公開日 2023/3/22

取材・構成 江口絵理