リケジョOGインタビュー (2)

柾谷 みなみ

八戸工業大学のリケジョOGは、さまざまな業種・職種で活躍しています。インタビューシリーズ第2弾では、工学部土木建築工学科を卒業し、全国有数のゼネコン「前田建設工業」に就職した柾谷さんにお話を伺いました。

――建築学を専攻する女子学生や建築系の職業を選ぶ女性は増えた印象がありますが、土木系はちょっと珍しいですね。


たしかに、建物をつくる「建築」は華があるイメージで、橋やトンネルをつくる「土木」は地味な印象をもたれがちですよね。でも、私はずっと土木の仕事につきたかったんです。 


――いつごろからそう思っていたのですか?


小学校のころは、将来の仕事については、「女性が活躍できる職業といったら看護師かな……」とぼんやり考えていたぐらいでしたが、中学校で、技術の時間に木材を切るところから椅子を作ったことがとても楽しくて。「ものを作る仕事っていいな」と思ったのが出発点でした。

 

そのとき、東日本大震災で壊れた橋や道路の復旧工事をしている人たちや、工事車両が頭に浮かんだんです。私もそんな風に、災害で失われたものを一から再建する仕事をしたい、将来は土木系に進もうと決めました。 


――中学生で「建設」と「土木」の区別がついている人は少ないと思います。どうやって調べたのですか?


3歳上の兄が大学受験の準備をしていて、兄もたまたま土木系の学科を目指していたので、兄が知っていることを教えてもらえたんです。幸運でした。


――高校は普通科で、2年生から理系コースに進んだのですね。


はい、小学生のときから国語より算数が得意でしたし、大学で土木を専攻するためにも、理系しか考えていませんでした。就職率も理系のほうが高いですしね(笑)。


 ――大学は地元で進学しようと思っていたのですか? 


実は県外の大学を一般入試より早いタイミングで受験したのですが、準備不足で落ちてしまって。でも最終的に入学した八戸工業大学では、土木専攻に女子が少ないこともあってか、先生が本当によく面倒を見てくださいました。学業のことはもちろん、日常生活や人間関係、アルバイトのことまで話を聞いてもらっていました。


――女子の割合はどれぐらいでしたか?


土木建築工学科全体で同学年が60人いるうち、女子は6人でした。そのうち3人が建築に進み、私を含めて3人が土木に進みました。私はあまり男女の別を気にせずコミュニケーションするほうなので、女子が少ないことは全然苦にならなかったですね。

 

会社の同期も、土木部門の40人中、女性は5人です。現時点で女性が少ない業界であることは間違いないです。


――就職先はどのように決めたのですか?


最初のうちは地元で土木の仕事ができる企業を探していたのですが、あるとき「大学でも県外に行かなかったのに就職先も地元にしたら、一生、県外で暮らす経験をしないままになるかもしれない」と思って、全国に拠点をもつ建設会社に志望を変えました。

 

研究室の先生に相談したら、前田建設についてよく知っている先生を学内で紹介してもらえて、事業内容や卒業生の活躍のお話を聞いて「私も前田建設に行きたい!」と思うようになりました。

 

――親御さんはどのようにお考えでしたか?

 

もともと、理系に進むことも大学に進学することも「好きなことをやりなさい」と応援してくれていました。ただ、仮に大学は県外に行ったとしても、就職は地元でしてくれたらと思っていたようです。私が考えていることを話したら、最終的には納得してくれましたが。

――昨年4月のご入社ですが、この1年はどのように働いていらしたのですか? 

 

4月からの半年は東京などで研修を受け、10月から12月までは大分県の現場で働かせてもらいました。老朽化した水力発電所関連設備の修復工事です。これから本配属となり、茨城県内の橋の拡幅工事に関わります。

 

――現場ではどのような仕事をしているのですか?

 

実際の作業は職人さんたちが行い、私たち建設会社は「監理」が仕事です。国交省や自治体、電力会社や道路の会社などのインフラ企業から発注を受けるのが私たち建設会社で、発注者さんへの対応、現場の安全管理、品質管理が主な仕事です。

 

現場では進捗を確認したり、職人さんと工事の進め方について意見交換したり。発注者さんに提出すべき書類や日誌を書くといったデスクワークも、かなり大きなボリュームを占めています。私はまだ新米なので任せてもらえる仕事が少ないですが、安全管理のための朝礼や夕礼に関する事務や写真の管理などを担当していました。

 

――今後、どんな風に仕事していきたいですか?

 

いまはまだ修行中でどんな現場でも学ぶことばかりですが、いつかは災害後のインフラ復旧の仕事に関わりたいです。災害なんて起きてほしくないですが、日本は自然災害が多い国ですし、今後は温暖化の進行で自然災害が増えてしまう可能性もありますから。

 

より個人的なことでいえば、いつかは私も結婚・出産をするかもしれません。でも、もし出産や育児で一時的に現場を離れることがあっても、その後は現場に戻って働き続けたいです。


柾谷 みなみMinami MASAYA


青森県八戸市出身。八戸工業大学第二高等学校を卒業後、八戸工業大学土木建築工学科に進学し、土木工学の基礎や測量技術を学ぶ。2022年、総合建設会社の前田建設工業株式会社(本社・東京)に入社。土木事業本部所属。


記事公開日 2023/2/22

取材・構成 江口絵理