メンバーインタビュー( 4 )


髙屋 喜久子

HITリケジョLABOメンバー・インタビュー Vol.4

髙屋 喜久子(八戸工業大学 感性デザイン学部 学科長


デザインを専門とする高屋喜久子先生はいつも学生に、「社会に出たら、文系や理系の区別なんてないのよ」と言っています。ではなぜ、理系に進みたいと思う女の子を応援するHITリケジョLABOに?――目指していることを伺いました。

――ご専門である「デザイン」は、文系にも理系にも分けられないですね。

一般的には、「美術系」の学問として文系に分類されることが多いかもしれません。たしかに文系的な面もありますが、車・時計などを作る工業デザインや建築デザインでは、理系的なマインドや知識も非常に重要です。

そもそも、世の中って文系か理系かでくっきり分かれているものではないですよね。どんなに文系的な仕事でも、たとえば事務職でもこれからはAIを使いこなすことが求められるでしょうし、バリバリの理系と思われがちな企業の研究職でも、自分が開発した製品の魅力を社内の人に伝えるには、受け手に合わせて言葉を丁寧に選ばなくてはいけません。

だから私はいつも「社会に出てしまえば、文系も理系もないのよ」と言っています。人を文系か理系かのどちらかに分けてしまうのは、高校のカリキュラムや大学入試の都合でしかないと思うのです。


――では、理系に進みたい女の子の選択を応援しようとしているHITリケジョLABOのビジョンとはお考えが違いますか? 


いえ、そんなことはありません。いずれは、「文系か/理系か」という区別をなくしていかなくてはいけないと思っていますが、いま、中学や高校で進路選択の岐路にある女の子が、だれでも「自分が行きたい進路」を選べるように応援したいという気持ちから、HITリケジョLABOのメンバーになったのです。

 

女の子が理系の進路を選ぼうとすると、親御さんや先生などの周りの大人から、「ほかの子と同じように文系にしたら?」とか、「女の子は理系科目は不得意でしょ?」と言われたりしたことがきっかけで文系を選んでしまうことも多いという話を耳にします。

 

親御さん世代や先生方のお気持ちもわかるんです。これまでは理系に進む女子が少なかったから、いったいどんな大学生活になるのか、そしてその先にどういう就職があるのか想像がつきにくいでしょう。つい、「みんなと一緒のほうがいろいろと安心でしょ?」と言ってしまうのかもしれません。

 

たしかに、文系に進めば、事務職や営業職を始め、「きっといろんな就職先があるんだろうな」とイメージがわきやすいですよね。

 

でも実は理系にも、文系に負けないぐらい様々な仕事があります。いまや情報技術にかかわるエンジニアは引く手あまたですし、ものづくりにかかわる技術職には、これまで少なかった女性の視点が強く求められています。それはつまり、「女性の活躍の場がたくさん用意されている」ということです。

 

それに、理系を選択したからといって、将来、事務職や営業職を選べないわけではありません。たとえばHITリケジョLABOメンバーの畑中さんのように、事務職として就職し、理系で勉強してきたことが強みになっている人もいます。

――「女の子が大人になったときに、より広い分野で活躍できるような進路選択を支援したい」ということなのですね。

 

はい、私たちHITリケジョLABOの仕事の一つは、女の子の前に立ちはだかる、「女は理系科目が苦手」とか「就職のイメージがつかない」という先入観で作られた「見えない壁」を壊すことです。

 

文系であっても理系であっても、本人の「やりたい」「好き」という気持ちに素直に進路が選べるような環境を作っていきたい。それが、女の子本人のためになるだけでなく、社会のさまざまな場所でダイバーシティを実現することにもつながると思っています。 

髙屋 喜久子 (Kikuko TAKAYA)

八戸工業大学 感性デザイン学部 感性デザイン学科 教授

 

専門はビジュアルデザイン、プロダクトデザイン。金沢美術工芸大学 産業美術学科工業デザイン専攻を卒業後、企業でウォッチやキッチンナイフの企画デザインに携わり、デザイン会社を設立。デザイナー兼プロデューサーとして働くかたわら母校の大学院博士後期課程に進学し、博士号(芸術)を取得。2018年より八戸工業大学に着任。