はたらく理系女子~リケジョOGインタビュー1

工藤留菜

社会のさまざまな業種・職種で活躍しているリケジョOGをご紹介します。第1弾は、生命環境科学科の出身で、プラント設備建設の特殊技術をもつ会社に就職し、人事部で働く工藤留菜さんです。

――もともと理系ではなかったのに、大学で理系学部を受験されたと伺いました。


はい、中学卒業後は工業高校のインテリア科に進んで、建築や内装デザインの勉強をしていました。ものづくりが好きだったんです。理系科目はむしろ苦手で、高校の先生には理系受験を止められていたほどでした(笑)。


――インテリアデザイナーになるための進学は考えなかったのですか?


八戸工業大学にはデザイン系の学科もあるので、生命環境科学科とどちらを受けるかすごく迷いました。でも、世の中で人がずっと必要とし続けるもので、なおかつ「自分がまだもっていないもの」を身につけたいと思ったんです。科学はどんな時代でもずっと必要とされるものですよね。それで、生命環境学科を受験しました。


3年のときに鮎川恵理先生の研究室に入り、指導していただきながら、東日本大震災の前後で海岸の植生がどう変化したかをテーマに研究をしました。


――就職はどのように考えて決めたのですか?


会社の中だけでなく、外に出て、社外の人とコミュニケーションをとりながら直接的な利益を上げる仕事がしたいと思っていました。ならば「営業」だと。


――またもや、まるで経験がなく、それまで得たものが活かせるとは言えない分野への挑戦ですね。


たしかに(笑)。ただ、私は最初、ぼんやりと「営業」としか考えていなかったので、鮎川先生は心配してくださって、「一口に営業と言っても、売るものによって全然違う仕事になるんだよ。工藤さんは何をしたいの?」と聞かれました。先生に何度も話を聞いていただきながら、自分のやりたいことのイメージを少しずつ固めていきました。


たどりついた答えは、高校で自分が学んできたインテリアを含む「建設業」と、大学で学んだ「科学」が融合している分野で働きたい、ということでした。


そして大学の企業合同説明会で偶然、目に止まったのが「昭和アステック」という会社でした。主に石油など可燃性の高いものを扱う工場設備(プラント)に不可欠の電気設備や計測機器を取り付ける工事をマネジメントする会社だと知って、イメージしていた業界そのものだと思いました。

――無事に入社試験に合格されましたが、すぐに営業部には配属されなかったとか。


当社は技術系と営業・事務マネジメント系のコース別採用で、私は後者でした。新入社員は全員、入社後約1年にわたって模擬プラントや実際のプラントでじっくり研修を受けます。配属はその後なんです。


――技術系でなくてもプラントでの現場研修を受けるのですね。工事に携わることもあるのだろうと思いますが、ご経験もないし、女性ですし、戸惑いはありませんでしたか?


いえ、「ぜひ行きたい!」と思っていました(笑)。現場で研修を受けることができるなんて、貴重な機会ですから。


実際、現場の職人さんの言葉や動きの一つ一つから、職人さんがどんなことを大事にしているかを目の前で見ることができましたし、当社の強みはどこにあるかを現場感覚として理解したうえで、当社の主要な事業である「電気工事・計装工事の施工管理とはいったい何なのか」を自分の体験をもとに語ることができるようになったと思います。

研修を受けた後、人事部へ配属されることを知りました。その時、人事部の責任者から、「人事という仕事も営業と同じく会社の魅力を社外の人に伝える仕事であり、相手が学生さんや大学であるという違いだけ」と言われ、たしかにその通りだと思いました。


人事の人間は就職活動中の学生さんに当社の事業内容や現場での仕事の様子を話す機会が多くありますが、もし本人が現場で働いたことがなければ、人から聞いた話や資料をもとに話すしかありません。しかし、現場での研修を受けていればリアルな体験をベースに話すことができます。ですから私にとって、新入社員研修は大きな財産となりました。


――理系学部で学んだことが、いまの仕事に生きていると思いますか?


思います。やはり石油系プラントでの製造工程を理解するには、大学で学んだ化学の知識が役に立ちましたし、卒論研究で学んだデータ解析の手法は、採用活動でデータの分析にも使っています。高校で学んだ設計の知識にも助けられていますし、これまで身につけたものをフルに使って仕事をしている感じです。

――入社してすぐ研修で1年、その後に人事としてのお仕事が1年で、今は3年目とのことですが、これからどんなふうに仕事をしていきたいと思っていますか?


新入社員研修は長期間でしたが、それでも現場を経験できたのはまだ当社の事業のごく一部なんです。できれば、まだ見ていない事業の現場にも研修に行かせてほしい、と上司に希望を出しています。


――「未経験の物事へのチャレンジ」は工藤さんの十八番ですね。


そうかもしれません(笑)。採用担当として初めての大学での企業説明会も、コロナ禍の影響でオンライン開催となり、初めてづくしでした。目の前の人の反応が見えない中での説明は非常に難しいことを痛感していますが、学生さんや大学のご担当の方に、当社の特徴や事業内容、働き方を理解していただきたくて、試行錯誤を続ける日々を送っています。

工藤 留菜 (Runa KUDOU)

青森県弘前市出身。青森県立弘前工業高校インテリア科を卒業後、八戸工業大学生命環境科学科に進学し、化学や生物分野を中心に学ぶ。2019年、防爆技術のパイオニアとして知られる昭和アステック株式会社(東京)に入社。

記事公開日 2022/3/11

取材・構成 江口絵理