メンバー・インタビュー(1)

片山裕美

HITリケジョLABOメンバー・インタビュー Vol.1

片山 裕美(八戸工業大学工学部工学科生命環境科学コース講師


小さいころから科学者を目指していたわけではなくても、超一流大学の出身でなくても、女の子は科学者になれる? 片山先生は、「実は私、高校生まで看護師になろうと思ってたんです」と教えてくれました。

――化学の研究者というと、フラスコや試験管をかざす「科学者」のイメージそのものですね。小さいころから科学者になりたいと思っていたんですか?


いえ、まったく考えていませんでした。小学生のときは総合学習の時間がとにかく楽しくて。最初から準備された自然観察や農業体験ではなく、先生たちは私たち子どもにテーマを決めさせてくれたんです。


たとえば「自分たちでおにぎりを一から作る」と決めたら、お米だけでなく塩も必要ですよね。そこで米を育てるかたわら、塩作りの方法も調べて、海から海水をうんうん言いながら運んできて作る。1つのテーマに1〜2年かけることも珍しくありませんでした。


自分たちでやりたいことを決めて、動いて、その結果を自分たちで引き受けて、うまくいかなかったら「どうすればうまくいくんだろう?」と考えて、また試してみる。そういうサイクルの面白さを頭と体で知ることができた時間でした。


一方、将来の仕事としてイメージしていたのは看護師でした。母が看護師だったんです。でも高校生のときに、看護師だけが選択肢ではないと思って、もともと得意科目だった化学や生物が活かせる生命環境学部を受験し、進学しました。とはいえ、具体的にどんなことを学ぶのかまではあまりイメージがついていなかったぐらいです。


でも、大学4年のときに本格的な研究を始めることになって、小学生のときの「総合学習の時間」の面白さを鮮やかに思い出しました。自分でテーマを決め、実際にやってみて、結果を受けて考え、別の方法でトライする……。研究ってまさにこれなんです。私はこういうことが好きなんだなとわかって、研究者の道へ踏み出しました。

――いまはどんな研究を?


環境汚染物質を分解する方法を研究しています。ダイオキシンなどの汚染物質はいったん放出されると長く土壌や水中、空気中に残ってしまい、人間やほかの生物に害をもたらします。それを化学の力で分解し、無害なものに変えていこう、という研究です。


――どうやって無害にするんですか?


汚染物質を「金属カルシウム」やアルコールなどと混ぜて分解する、という方法が知られています。この方法なら、莫大なエネルギーを使って加熱したり圧力をかけたりしなくても、無害なものに変えることができるんです。


そして、そこに鉄鋼を作るときに出る廃棄物「鉄鋼スラグ」を追加すると、さらに分解しやすくなることが分かりました。いまは、なぜ分解しやすくなるのか、もっと分解しやすくするためにはどうすればよいのかを研究しています。


それからもう1つ。いま、水素エネルギーが注目されていますよね。水素エネルギーを私たちの生活に役立てるには安定した供給が必要となります。しかし、水素は運ぶときに爆発の危険性があるのが難点です。そこで私は、水素を安全に、そして一度に多くの量を運ぶにはどうすれば良いのかを考えています。先ほど紹介した汚染物を分解する手法にヒントを得て、水素を物質の中に閉じ込める方法を研究しています。


――文系か理系か迷っている中学生・高校生にアドバイスがあれば。


中学生・高校生のときに、大学で学べることや将来の職業について全部を知ったうえで決めることは難しいでしょう。だから、決めた後で「失敗した!」と思うこともあるかもしれません。


でもそこで諦めてしまわないでください。入った環境で、自分は何が好きで、何ができて、何を目指したいのかを考え続けていれば、いずれ必ず、自分が好きなことと接点がある勉強や仕事に近づいていくことができますから。

片山 裕美 (Yumi KATAYAMA)

HITリケジョLABO副会長/八戸工業大学工学部生命環境科学科講師

専門は環境化学、分析化学。県立広島大学生命環境学部環境科学科博士課程修了。2018年博士(生命システム科学)取得。残留性有機汚染物質分解法の開発や、水素を有機物に閉じ込めて貯蔵する技術を研究している。また、青森県田子町役場と共同で、田子にんにくの栄養と土壌成分との関係を調査したり、八戸市近郊で子ども向け化学実験教室を行うなど、地域貢献も積極的に行っている。


理系の学問や進路に関する講演・個別相談のご要望は以下で受け付けております。化学や環境科学はもちろん、それ以外の分野でも専門の研究者がいます。対象、内容、日程、開催方法など、気軽にご相談ください。


八戸工業大学「HITリケジョLABO」 rikejo@hi-tech.ac.jp 


記事公開日 2022/2/4

取材・構成 江口絵理